【書評】「ソングス・アンド・リリックス」|作詞家の魅力にあふれた1冊

今回は作詞家、音楽プロデューサーのzopp氏が書き下ろした小説「ソングス・アンド・リリックス」の感想です。

内容紹介

人気作詞家zoppの書き下ろし小説。
学校帰り、明は渋谷で路上ライブをしている同級生の里美と出会う。彼女が見守る中、初めて作った歌詞で文化祭の舞台に立つが大失敗。成績も低迷し、見かねた親に行かされた留学先のアメリカで、明は作詞の魅力を再発見する。夢へと向かう作詞家のたまごに人気作詞家が自身の思いを込めて綴った青春音楽小説。引用:http://www.amazon.co.jp/ソングス・アンド・リリックス-講談社文庫-zopp/dp/4062932903

zopp氏はwikipediaを見ての通り、代表作に2005年の青春アミーゴ(修二と彰)があり、2016年の今もバリバリの現役第1線で活躍されている。すげー。

で、実は以前、私はzoppさんが主催している作詞教室である歌詞クラブに参加し、約3ヶ月間作詞における心得や手法について教えていただいたことがある。そこでは毎週課題(主に作詞)が出されるので期間中は苦しかった。普通に残業ありありのフルタイムの仕事をしながらなので自然と睡眠時間が削られていき、、、ちょっとハゲた気がする(もちろん何の恨みもない)。作詞家を目指している方にはオススメだ。是非受けた方がいい。では本の感想です。

面白い

この本を手に取ったとき、作詞家が書いた本なのだから、何か作詞に関するテクニックや心得を学びたいというよこしまな気持ちだった。何たって僕はコスパ世代だ、実用書にしか興味はない、過去読んだ小説のことは思い出せない。

いやぁ面白かった。一気に読んでしまった。「あれ?あれ?あと数ページしかないよ??明と里美(※)はどうなっちゃうの???」(※この小説の主人公とヒロイン)とか思っちゃった。はらはらどきどきしてしまった。完全にzopp氏の手のひらである。

私はこの小説を“作詞”という目線で読んだが、作詞に興味が無くても恋愛青春小説としも楽しめるし、CD不況にあえぐなか、バージョン違い商法や握手券商法に苦悩するレコード会社の登場人物も出てきたりして、きっと音楽業界で働く方も共感し楽しめるようになっている。抜かりない。

職業作詞家とはなにか

職業作詞家とは

日本では専業作詞家だけでなく、小説家、放送作家、コピーライターなど他業種を本業とする人も作詞業に容易に参入できて、競争が激しい。また、作曲家や歌い手本人が作詞をするようになり、専業作詞家の仕事の減少に拍車がかかってきている。さらにアーティストとして活躍していた人たちが、作詞家に転向する例を増えてきている。作詞だけを生業にしている人を他と区別して「職業作詞家」と呼ぶ。著書より引用

と本のなかで説明されている。誰かに歌ってもらう為に作詞をする方ですね。小説の主人公も職業作詞家を目指します。zoop氏は作詞を核としていろいろやられているようなので、もはや職業作詞家ではないのかな。

作詞家が小説を書くことってよくあることなのだろうかと思いGoogleで「作詞家 小説」で検索すると、zopp氏と森 浩美氏くらいしか出てこなかった。普通のことではないのだろう。切り開いてるな。オンザレールの私の人生と比べると悲しくなるぜ。

もちろん作詞も学べる

作詞には正解が無いという大前提がありつつも、物語の中には心得やテクニックもちりばめられていて、作詞を学べる本にもなっている。

作詞ってある出来事を経験してどう思ったかをそのまま歌詞にすればいい

同じ言葉を繰り返すことで印象が強くなる

歌詞クラブでの講義がよみがえる。特にヒール役として登場する風祭(かぜまつり)というキャラクターの言葉はzopp氏の教えそのままだ。(かなり破天荒なキャラなので言動や行動はzopp氏のそれとは違うと思うが笑)

また、主人公たちが作詞した作品がいくつも出てくるのだが、それがまたすごい。著作権とかの問題があると思うので中身までは書けないが「禁断ランデブー」という歌詞とかすごいと思う。比喩表現や情景描写を使い直接的な説明が無い、詩的である、にもかかわらず意味が通じる。もはや職人技。ひれ伏すしかないです。ははぁー。

それに、おそらく主人公の成長に合わせて登場する歌詞のレベルもコントロールされている。物語後半になるにつれ、主人公の作詞がより洗練されている気がする。ここら辺も、zopp氏だからなせる技か。

作詞は才能か

主人公たちは物語のなかで、素晴らしい歌詞をいくつも送り出していく、また現実でもzoop氏は10年以上に渡り、世に素晴らしい歌詞を送り出し続けている。これは、才能なのか、産まれ持った資質なのだろうか。神からのgiftなのか。私は多分違うと思う。(もし、努力を続けることが出来る能力を才能と呼ぶのなら、才能は作詞に必要だ。)歌詞クラブに参加しzopp氏を間近で見て感じたことなのだが、人生そのものが作詞に向けられていて、24時間すべてが血となり肉となっているのだ。分かりにくいっすね。もっと具体的に言うと、前回ブログに書いた、「アイデアの作り方」そのものをリアルに実践している気がする。音楽に限らず、経験したものを収集し、自分なりの尺度で分類し、組み合わせたり、組み替えてたりしている。それを自力で見つけたのなら、やっぱりzopp氏は天才だな。

でも、才能が無くったって、基本ルールは書籍「アイデアの作り方」に書いてあるし、じゃあ作詞の場合どうやるのかのより具体的な方法論は歌詞クラブで教えてもらえる。優しい世界。後はやるかやらないかの問題だけだ。

このブログは1日のPV数が2とかだが(笑)、教えていただいた方法論をそのまま書くのは控えようと思う、一応インターネットだしね。興味がある人は、実際に受講すればよい。

最後に

あまりに褒めまくりの感想文になったが、私は別に関係者じゃないよ。その証拠に最後にdisっておこう。私は普段、小説を読まないし評論家でもないので、本書の小説としての完成度は分かりませんが、読んでて時々物語りから醒める時があるにはあった。「あれ、アメリカ留学編もう終わり!?」とか「むむ、武田さん(登場人物の一人)に作詞テクニックを説明させ過ぎてキャラ変わってね?」とか。しかし、そんなことは問題ではない。主人公(≒zopp氏?)の熱さと作詞家の魅力が詰まった1冊だ。

さぁ、私も頑張ろう。

おわり

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